学び・研究:リンク集「PCLife Φ"s Event-Horizon of the Earth」

Images from Instagram
#robertedwardgrand

森の未来は菌だけが知っている – 森はどのように成り立ち、遷移していくのか

土のなかには、私たちがかつて想像もしなかった微生物の世界が広がっています。その目に見えない微生物たちがつくりだすネットワークは、私たちが普段目にしている地上の世界をも変えてしまう、驚くべき力を持っているのです。ここでは、その土のなかの微生物たちのはたらきを紹介します。 なぜ樹木は森を作るのか 樹木には、固まって林をつくる種類もあれば、人間が植えなければ林をつくらない種類もあります。たとえば、どこの野山でもマツ林(松林)は普通に見られますが、サクラ林やモミジ林はありません。では、林を作る樹種と作らない樹種は、一体、何がどのように違うのでしょうか。その答えは、見上げるように大きく育った樹木ではなく、そっと視線を下ろした足元で見つかるのです。 地面から数センチのところには、実生(みしょう)と呼ばれる木の赤ちゃんが生えています。その実生がぐんぐん成長して成木となり、さらに次世代の実生の定着を促進するとき、ひとつの樹種だけの林ができます。その過程のなかで、土壌環境に変化が起き、マツの下の土壌にはマツの実生の成長を助ける「共生菌」が増えます。さらに、その共生菌が次世代の育成を助け、このサイクルが繰り返されることで、マツ林ができあがるのです。 一方で、サクラの下には、共生菌と異なり寄生菌が土壌に蓄積し、その実生の成長を阻害するため、寄生菌に影響されにくいサクラ以外の実生でなければそこに定着することができません。野山でサクラが固まって生えることなく、森の中でぽつりぽつりと疎らに生えているのはそのためです。 このように、樹木はそこに存在するだけで土壌環境に影響を与え、その土壌環境の変化が、将来その場所で育つことができる樹木を決定づけるところまで影響を及ぼします。要するに、樹木は足元に蓄積する「土壌微生物」と相互作用しながら変化し、その結果、時間とともに森を構成している樹木も移り変わるのです。 樹木の多様性を守り、森林の変化を促す原動力「菌根菌」 土壌にはさまざまな微生物が存在し、実生を待ち構えています。その代表格といえるのが、「菌根菌」という仲間の共生菌です。菌根菌は、根の表面付近や内部に侵入して生きる「かび」や「キノコ」の仲間です。これらの菌類は水分や土壌の栄養分を吸収して植物に与え、一方で植物は糖を菌類に与え、互いに役立つ関係を持っています。このような関係を菌根共生といい

academist Journal

動物はどのように秩序だった群れをつくるのか? – アクティブマターの物理で迫る、線虫の群れ形成メカニズム

「アクティブマターの物理」とは? 水族館のイワシの群れが秩序だって美しく泳ぐ様子を、みなさんはご覧になったことがあるでしょうか? 夕暮れどきに飛ぶ鳥の群れは、バードウォッチャーにとって絶好のシャッターチャンスです。イワシや鳥は誰かに指示されているわけでもないのに、なぜ動く方向を揃えてかたまりを作りながら、あちこち移動できるのでしょうか? これはよく考えても答えが出ない不思議な現象です。 分子がたくさん集まったときに何が起こるかは、統計物理学という分野で深く研究されてきました。統計物理学の手法などを用いながら、生物のように自ら移動する物体が集まったときに起こる現象を研究する「アクティブマターの物理」という新しい学問分野があります。 アクティブマターの物理は、タマス・ビチェックによる数理モデルの提案がひとつの契機となって盛んに研究されるようになり、「生物でも非生物でも、自発的に運動していれば共通するメカニズムで秩序構造が形成される」と予想されています。これまで、非生物の分子や微生物などを利用した研究により、アクティブマターの物理が現実をよく記述できることがわかってきました。 しかしながら、最も高等な生物である動物に対して同様の枠組みを用いることができるかどうかは不透明なままです。なぜなら、野外の魚や鳥などの動物の群れは研究対象として操作するには大きすぎるため、実験室スケールのさまざまな状況下で解析することが一般的には難しいからです。 究極のモデル生物「線虫C.エレガンス」による群れ形成の発見 線虫C. エレガンスは、1960年代に研究に利用され始めた線形動物のひとつです。その特徴は、体が透明であること、20℃においてたった3日半で卵から大人になるライフサイクルの短さ、分子遺伝学的手法の簡便さなど、その研究のしやすさを挙げると枚挙にいとまがありません。それゆえ、線虫C. エレガンスはときに「究極のモデル生物」とも称されます。 線虫C. エレガンスのご活躍は、アンドリューブラウン著『はじめに線虫ありき』などに記されているので、詳細はそちらに譲るとして、本研究で最も重要視したその特徴は「小さいこと(約0.5mm)」と「大量に得られること」です。前述の研究のためには、実験室スケールで動物を大量に準備する必要がありますので、線虫は大きなポテンシャルを秘めた「アクティブマター」で

academist Journal

0コメント

  • 1000 / 1000